米国からのレポート
医療の質の向上/ヘルスケア・リスク・マネージメント—薬剤による医療事故とその予防・1
中島 和江
1,2
1Harvard Risk Management Foundation
2Brigham and Women's Hospital
pp.559-563
発行日 1997年6月1日
Published Date 1997/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541902137
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1995年,癌治療施設として世界的に有名なボストンのダナファーバー癌研究所で,乳癌の治療中であった39歳と52歳の2人の女性患者が,抗癌剤(サイクロフォスファミド)の過量投与ののちに,1人が死亡し,もう1人は不可逆的な心筋障害を被った.シカゴ大学病院では,睾丸腫瘍の治療中であった41歳の男性が,抗癌剤(シスプラチン)の過量投与ののちに死亡した.ボストンのチルドレン病院では,てんかんの治療を受けていた5歳の少年が抗けいれん薬の代わりに誤って抗癌剤を投与されたが,幸いにして大事には至らなかった1).これらの医療事故は,米国のマスコミによって大々的に取り上げられ,関係した病院や医師らは多くの非難を浴びた.確かにこれらはとんでもないエラーであるが,これらのエラーは皆,できの悪い医師たちが起こしたのであろうか.医師のおかしたたった一つのエラーが,このような医療事故につながったのであろうか.
スリーマイル島原子力発電所やスペースシャトル「チャレンジャー」の事故調査は,次のような点を明らかにした.
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