現代病院長論
赤十字病院の経営とリーダーについて
依田 忠雄
1
1総合病院岡山赤十字病院
pp.372-376
発行日 1994年4月1日
Published Date 1994/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901211
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国は「医療費の適正化」の名のもとに,医療費の抑制策を続けてきました.経常黒字が約1,300億ドルという経済大国でありながら,財源がないというのでなぜ医療費を締めつけるのでしょうか,私には理解できません.平成5年の国民医療費は約24兆円で年々約5%の増加率です.この金額は国民1人当たり約20万円に相当し,1人当たり毎年約8,000円ほどアップしています.過去10年間の診療報酬,上昇率は約18.5%で薬価差益分の15.5%を引くと,実質わずかに3%のアップに過ぎません.ところが,この10年間に人件費は約40%,物価は約24%上昇しています.
つまり,われわれ医師である院長は,診療だけでなく,経営管理についても厳しく思いを馳せねばならず,心豊かに診療や管理をすることができません.そのことは平成2年には1万60余りあった病院が,倒産あるいは病院から診療所へのシフトで,現在は9,981に減少していることにより裏付けられます.特に中小の民間病院は非常に悲惨な状況で,病院にとって全く危急存亡の時代といっても過言ではありません.
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