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社会保障財政を取り巻く環境が厳しくなるなか,医療費増抑制への圧力が強まっている.他方,医療技術の進歩と国民の医療の質に対する関心の高まりにより,医療者は継続的なパフォーマンスの向上が求められている.このような難しい状況で,医療に対する適切な評価を獲得するためには,医療の情報化によって各レベルで「見える化」を進めていくしかない.筆者を含めDPCの開発にあたってきた研究者はそれを目的としてきた.迫井論文ではDPC開発の目的と経緯について詳細な説明がされている.お互いに「若手」だった筆者ら研究者と厚生労働省の担当者のやり取りが昨日のことのように思い出されるが,読者の方々に開発に当たってのわれわれの思いをくみ取っていただければと思う.
DPCの開発に当たっては,その応用範囲を広めることに努力してきた.伏見論文ではDPCの医療評価への活用について説明されている.入院およびその前後の当該施設での外来の詳細情報が収集されているDPC制度では,それらを活用することで医療の質評価(特にプロセス評価)が可能となる.伏見論文で紹介されている国立病院機構での実践は,今後わが国の医療評価のひな型となるであろう.前村論文ではジャーナリストの視点からDPCの意義について説明していただいた.国民の要望に応えることができる情報であるにもかかわらず,その理解が進んでいないという氏の指摘はその通りであると思う.行政もわれわれ研究者も説明努力を行うべきだろう.飯原論文ではDPCデータの脳卒中研究での応用例が示されている.執筆者である飯原弘二教授はいち早くDPCデータの臨床研究への応用可能性について関心を持っていただいた臨床家であり,その応用例であるJ-ASPECT Studyからはすでに多くの論文が発表されている.これらは他の診療領域の研究者の参考になるであろう.鈴木論文では,病院管理の実務家の視点からの応用事例について具体的に説明されている.鈴木氏は筆者らの研究班が開催してきたセミナーの初期からの熱心な参加者である.「分析の切り口は現場に転がる課題そのものである」という指摘は重要である.平成28年度からDPC調査において重症度,医療・看護必要度がHファイルとして収集されているが,林田論文では看護業務の評価にどのようにDPCを活用するかが説明されており,クリニカルパスの評価および退院マネジメントにどのようにこの情報を活用するかという具体的な例が示されている.DPCを用いた看護研究は新しい分野であり,この論文を参考に看護領域でのヘルスサービスリサーチが進めばと思う.最後に筆者の論文では,米国における診断群分類の動向を例として挙げ,わが国においても医療全体をカバーする分類体系の開発が必要であることを指摘し,その一環としてDPCの一般化に向けた研究が行われていることを紹介した.
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