今日の視点
医療ソーシャルワーカーの業務と資格制度化問題
高橋 紀夫
1
Toshio TAKAHASHI
1
1厚生連佐久総合病院
pp.479-483
発行日 1989年6月1日
Published Date 1989/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209575
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ある日の業務から
暖冬といっても,信州佐久の朝は厳しい冷え込みである.足早に玄関を入り,医療相談室の自分の机に座ると,外の寒さがまるでうそのようだ.ボランティアがいれてくれた熱いお茶を飲むと仕事への意欲がわいてくる.今日も忙しい一日になりそうな予感がする.
「おはよう」.買物袋を下げたFさんがいつもどおり,にぎやかに相談室に入ってきた.彼女は41歳.現在内科に入院中で,Mワーカーの受持ち患者だ.毎朝のように相談室にやってきては,あれこれしゃべってゆく.単身生活なので,Mワーカーをずいぶん頼りにしているようだ.こうした患者は少なくない.筆者が受け持っている精神科のOさんもその一人で,今日も午前中に来室することになっている.彼は47歳.長い入院歴を経て,5年ほど前にようやくアパートを借りて単身生活を始めた人だ.しかし,日常生活がなかなかうまくいかず(例えば生活費のコントロールや女友だちとのトラブルなど),その都度筆者のところに相談にやって来る.彼の今日の用件は,「福祉事務所の担当者から内職を勧められているが,自信がない.どうしたらいいのか?」という話になるはずである.最終的にはOさんの意志に任せるしかないのだが,筆者としては消極的アドバイスにならざるを得ないだろう.
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