定点観測 富山県・井波町から
包括医療体系と自治体の責任—保健・医療・福祉の体系確立を
能海 勲
1
Isao NOHMI
1
1井波厚生病院
pp.247
発行日 1988年3月1日
Published Date 1988/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209257
- 有料閲覧
- 文献概要
地域医療担当医の老齢化が進行してきている.すなわち,開業医の老齢化と新規開業医の減少で,地域医療の崩壊が進行しつっある.当地では筆者が赴任した昭和41年頃には人口22,000人の診療圏に10余の医院があった.その後新規開業医は3病・医院であったが,医師の老齢,あるいは死亡等により現在8病・医院が存在するのみである.しかし,4医院の医師が高齢となり,当地の医療機関は実質的には4病・医院のため,地域医療の業務が当院にのしかかってきて,従来の学校医,産業医,一般検診業務を当院が担当しなければならない状態となってきている.個人医院の子弟にも医師はいるが,地元開業がなく,病院での業務量の増大が起こり,町議会でも今後の地域医療の確保に大きな関心が寄せられている.
医師の開業志向により国保病院の医師確保が困難となり,病院経営が悪化して廃止の方向で議会で論議を呼んだ昔時に比べて時代の流れを感じる.昭和41年当時赴任した筆者は病院再建のため,医療の近代化,医療機器,検査技術の導入,健康管理事業の必要性を説いて町長と折衝した思い出がある.開業医との競合を避け,病院医療の向上と保健事業とのタイアップを病院再建の柱として強く主張し実践してきた.医療機器の導入,スタッフの充実と平行して地域の医療レベルの向上を提唱し,今日いう病診間の相互理解のため,地元医師会と共同で地区研修会を開催してきた.
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.