連載 変化する病気のすがたを読む・2
病気のすがたの成り立ち
倉科 周介
1
Shiusuke KURASHINA
1
1東京都臨床医学総合研究所診療方法論室
pp.785-789
発行日 1986年9月1日
Published Date 1986/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208914
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1.なぜ昭和ひとけたか
昭和ひとけた生まれと俗にいわれるのは,1925年から1935年ころの期間に生まれた世代のことである.なぜかこの世代の男子に特殊な死亡パターンがあることを説明したのが前回である.
なぜこのような現象が起こったのか.経年的に時代をさかのぼって観察すれば,この世代の生涯を通じて,その特殊性が連続しているのがわかる.だからといって,出生コホートの特性が原因だ,コホート効果(co-hort effect)だといっても,それではこの現象が発生する原因やメカニズムの説明にはならない.原因がわからないことには対策も立てようがないのは確かである.当節の細菌感染症のように抗生物質で一件落着というわけには,肝硬変も糖尿病も,まして悪性腫瘍などは,行くはずがないからだ.ただし原因やメカニズムがわかっても,対策はないということだってザラにある.このことは忘れてはならない.わからなければ対策が立たないとは医学者がよく口にするセリフだが,ではわかったら対策が立てられますかと反問されたらグウの音も出なくなる.そういうその場凌ぎの出まかせは言ってはならないし,期待してもいけない.細菌の代謝経路がキッチリとわかったからペニシリンやストレプトマイシンが発見されたのではないことを思い出しておこう.
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