時評
研究者と現実解決能力と
塙 正男
Masao HANAWA
pp.64
発行日 1985年1月1日
Published Date 1985/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208502
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田中角栄を一刺しした,その当のハチが,TVなどマスコミに登場,ついにはヌードまで開陳してくれたのは,さすがにオカシイと言うよりは興ざめであった.ところで,この10月になって,またまたハチが新聞の社会面をにぎわしてくれたが,今度はホンモノのハチであった.
岐阜県ではスズメバチの群に襲われた高校生16人が病院に担ぎ込まれ,大分県では山林の下刈作業中の夫婦が死亡したのである.そのまた2日後に,群馬県の赤城山に遠足中の小学生35人がジバチ(クロスズメバチ)に刺されたというニュースがあった.こうしたハチの襲撃に対して,社会はどう反撃すればよいのだろうか,直ちにハチの絶滅作戦を開始すればよいのだろうか,あるいはこれは天災なのだろうか,等々,数々のギモンはあるが,とりあえず現場の医者は応急処置をせざるを得ない.ここでスズメバチの専門家(研究者)が登場,その生態についての最近の情報を知らせていた.「秋になると,彼らは天敵を恐れてコーフンしているから刺激するな」というのである.そして,最近ヘビなどの天敵が少ないので,スズメバチは市街地に進攻しているという.直ちに私はコレハホントーの専門家だなと確信した.実は,都内の拙宅にスズメバチが巣くっているのを発見していた.日夜,その下を通っていたのであるが,2mくらいの木の葉陰に隠されていた巣を2階の窓からグーゼンみつけたのだ.とにかく危険は身に迫っている.
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