リハビリテーション院内から地域へ
地域リハビリテーション論
竹内 孝仁
1
1東京医科歯科大学
pp.1084-1089
発行日 1982年12月1日
Published Date 1982/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207909
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リハビリテーションの宿命としての地域活動
人は常に自らの生—すなわちその現れとしての生活—の恒常性を求めている.病と飢えは,その生活の恒常的な維持を脅かす二大要因である.医学は,このうちの病をいやすことによって,病む人を元の生活にもどす役割を果たしてきた.病気の治癒=生活の回復という図式は,現代医学とその実践である医療の前提条件である.
ところが,現代医学は,その発展の過程において,この前提条件を次第に見失うようになっていく.現代医学はシデナムの疾病自然誌—すなわち疾患の分類と個々の疾患像の確立—と,病理解剖学との結合を土台として作り上げられてきた1).前者は,個々の疾患をその徴候と経過に基づいて比較対照するために均一な環境を必要とし,このために食事,温度,風通し,清潔さ,看護内容などが異なる家庭は疎まれ,これらの均一な病院が医学の主要な活動の場に変わっていった.家庭の排除は,患者を個人として特徴づけていた生活の衣をはぎ取っていくことになる.彼らはただ疾病を持つ人間として,匿名的な対象となっていくのである.
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