院外活動日誌
退院患者を山村にたずねて
大喜多 潤
1
1兵庫県リハビリテーションセンター
pp.848
発行日 1978年10月1日
Published Date 1978/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206680
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○月○日兵庫県北部の片麻痺患者宅へ家屋改造追跡調査に出向く.あれほど一所懸命にやっていた歩行訓練や車椅子操作もほとんど忘れてしまったのか,もう少し自分で動き回っても良さそうに思うが,このケースも決まったようにベッド上の生活が大半を占めている.嫁や家族に対する遠慮からだろうか,それならなぜもっと自分自身で積極的に移動しようとしないのか,家長制度の気風の残っている山村,農村では年寄を粗末に扱っているといわれないように--つまりこのことが最終的にわが身に返ってくることを恐れて波風立てずにじっとしているのか.本人自身の意欲が欠ける者へのリハビリテーションは空回りの連続である.どこに真のゴール(目標)を置いて治療計画を立てればよいのか,ありったけのサービスを提供しておいて,後は歩どまりを期待するような無駄はなるべく避けたい.では家族の教育を徹底的にすべきだろうか,それにしても他人の家庭の事情にどこまで入り込めるか疑問が残る.
○月○日退院時に調査して,わずかなアドバイスのみで終った重度の四肢障害者の家を訪れた.農家で大々的な改造もせずに悠々と生活しているのにまず驚いた.年老いた母親との二人暮しではさぞ不自由だろうと思っていたが,つい先だって治療のため母親が入院したが,その間も一人でどうにかやっていけたと話す言葉の裏には一人の生活でもやってゆける自信さえ感じられた.
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