今月の本棚
—長 宏 著—「患者運動」
守屋 美喜雄
1
1医療法人社団一ツ橋診療所
pp.847
発行日 1978年10月1日
Published Date 1978/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206679
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‘人権問題’としての患者運動
一口に患者運動といっても,その中には,同病の患者や家族が集まって,療養経験を交流しあうといった,いわば親睦会的なものもあれば,その疾病の治療・予防あるいは患者救済といった問題について,政治的・社会的に行動するものもある.そして,後者の中には,公害・薬害・医療事故などの問題をめぐって,時としては医師や医療機関と敵対関係におちいるケースもあるので,おおかたの医療関係者にとっては,患者運動は,いってみればケムタイ存在とみられているように思われる.
そうした中で,数年来,糖尿病協会や糖尿友の会の運動にかかわりあいをもち,また,ベーチェット病患者を救う医師の会の事務局に参加してきた私にとっては,第一になぜ患者が組織をつくり,運動をしなければものごとが解決しないのか,そんな不幸な運動が,いつまで続けられなければならないのかということと,第二に「よい医療をしたい」という医療側の願いと,「よい医療をうけたい」という患者の願いとは,本来一致すべきものなのに,しばしば両者の間に対立的な情況がつくりだされ,時には告発騒ぎにまで発展してゆくのは一体なぜなのか,という二つの疑問が,いつも頭から離れることがなかったわけである.
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