一頁評論
主治医の必要性
長谷川 恒雄
1
1伊豆韮山温泉病院
pp.64
発行日 1976年4月1日
Published Date 1976/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205881
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自然科学の進歩は,包括されていた学問の領域を専門分化へと導き,各種,各様な専門分野が生まれてきた.医学も同様のコースをたどり,内科学でも循環器,呼吸器,消化器,血液,神経,感染・アレルギー,老人,内分泌,代謝,腎など種々の学会が設立された.総合病院においても各種の専門内科が配置されてきており,将来はさらに細分化される傾向である.内科学だけでなく,外科学,眼科学,耳鼻咽喉科学その他すべての治療医学も同様である.このまま進めば数十ないし百を越える専門診療科が出現するに違いない.
専門診療科が増えることは学問の進歩に連なり,その進歩がよき医療として国民に還元されることになるので,誠に結構なことであり,望ましいことである.細分化した専門診療科が増えれば増えるほど,患者側では病気について選ぶ診療科に関する知識が必要になる,これも医学知識の向上と普及によって解決する方向をとるとすれば,すべてがうまく対応して処置され,問題は専門診療科を地域医療の中で,どのように配置するかという対策だけとなる.しかしこのような方向は円滑に推進できるであろうか.医療は患者のニーズに応じて与えられるものであるが,感冒,気管支炎になれば呼吸器科や感染・アレルギー科を訪れ,胃炎,腸炎では消化器科を訪れる必要がどの程度あるであろうか.
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