一頁評論
思い違い
越山 健二
1
1上市厚生病院
pp.49
発行日 1976年4月1日
Published Date 1976/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205873
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世に「思惑違い」,「思い違い」という言葉がある.これは「見当はずれ」,「見当違い」ということで,最初に思い,計画し,実行してきたことが,全く目的からはずれていたときに使用する言葉のようだ.今日のいろいろな社会事象をみていると,何か世の中すべてが「思い違い」をしているように思われ,この言葉が実感として強く胸にこたえるのである.
昭和36年,池田内閣が所得倍増を唱え,当時13兆7,000億円のGNPが,10年後の昭和45年には4倍の73兆円にはね上り,50年にはさらにその2倍の138兆円になろうとしているという.当時は,GNPの増大こそは日本の生きる道であり,国民の幸福,繁栄につながり,求める人間の欲求に直結するものとして誰もが疑いを持たないようであった.これが昭和48年の石油ショックを契機にして,一挙に反省を求められ,思い違いであり見当はずれであったことを,みんなが考えさせられることになったようである.
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