Japanese
English
研究と報告
退院後の分裂病のケースワークについて
On the casework of discharged Schizophrenic patients
竹村 堅次
1
K. TAKEMURA
1
1財団法人井之頭病院
1Inokashira Mental Hospital
pp.31-35
発行日 1959年1月15日
Published Date 1959/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200045
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1.はしがき
精神科領域の治療技術の進歩にもかかわらず,分裂病(早発性痴呆)の治療効果に関しては,相変らず楽観的見解が許されない。精神病院で分裂病の占める地位の重要なことはいまさら論ずるまでもないが,順序としてこの点を少しく検討するならば,まず最近の井之頭病院の在院分裂病対全在院患者の比率であるが,表1に各年別に示した通りである。普通1年間に入院する分裂病の全入院患者に対する比は大体50%をわずかに上廻る程度であるから,この表で在院患者中に分裂病の占める割合が毎年ジリジリと上昇しつづけていることが判る。もう一つ見逃してはならないことがある。それはこの上昇率が逐年増床による収容能力の増大にも打勝つて,つまり長期在院の分裂病者が病舎に沈澱しつつあるのではないかと推定されることである。
表2は著者がすでに神経学雑誌(60巻7号)に発表した分裂病の臨床統計の一部であるが,これによれば経過5年以上の分裂病で,病状がほぼ固定したと思われる時期の治癒率は22〜23%に過ぎず,進歩した治療の総決算としてはまことに物足りない数字といわなければならない。なお全分裂病中約10%は予後可良な非定型分裂病であるから,早発性痴呆という意味での分裂病の治癒率は正に寂寥々である。しかも見かけ上の寛解は相当に多いのである(経過3年以上の分裂病で,少くとも32%に完全寛解の発現を見る)。
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