巻頭言
精神分裂病を解決するために
奥村 二吉
1,2
1岡山大学
2川崎医科大学
pp.730-731
発行日 1970年9月15日
Published Date 1970/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201652
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この巻頭言を書いている時に新聞は両毛精神病院の火事と17人の患者の焼死を報じた。焼跡に残った鉄格子の写真がさながらわれわれ精神科医の無力をあざ笑うかの如くであった。
戦後精神病院のベッド数は物凄く増し,向精神薬といわれるものは数多く出現した。しかし精神分裂病については完全寛解に達した患者の数は戦前と少しも変わっていないことは林・秋元の調査と最近の保崎らの報告とを見ればあまりにも明瞭である。唯不完全寛解と軽快とが林・秋元(24%)に比し,保崎(47%)で多くなっているのみである。要するに,われわれ精神科医は分裂病患者を治しもせず悪化もさせず蛇の生ま殺し状態に置くことに努力しているにすぎない。いろいろの薬はできたがそれはただ患者を静穏化させるだけであって,言うまでもなく根治薬ではない。精神分裂病が全快しない,そこに現代のあらゆる問題がある。劣悪精神病院の増加,学会の造反紛争,これら全ては分裂病に根治法がないということに基因するように私は思う。
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