特集 病院外来を点検する
外来体制と管理
山本 善信
1
1兵庫県立病院柏原荘院
pp.39-45
発行日 1971年12月1日
Published Date 1971/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204518
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はじめに
人生の苦しみとして,釈迦は,生老病死の4つをあげているが,医療機関というものは,他のどんな機関よりも切実に,この四苦と取り組み,これと密着して動かねばならないところである.そもそも,1個の生命が母の胎内に宿ってより出産するまでを,産科が取り扱い,子どもが生まれてからは,成長し,老化し死亡するまでの過程における病気を,新生児センター・小児科・内科などが取り扱い,これを中心に臨床各科が組織されている.
日常生活で人がなんらかの異和を感じたり,生命に脅威する症状が現われた場合に,何をおいても医師の門をたたくことになる.最初に診察の依頼を受けた医師や病院は,人命の尊さのゆえに,かつ,わが国では,医師法第19条のゆえに,これを拒むことは許されない.このとき,患者の地位や,家庭的・社会的・経済的環境のいかんをとわず,また,その所業の善悪をとわず,医療機関は,無条件で無差別に診察を引受けるのであって,その際,報酬の多寡を考えることすら許されない.たとえ,ごくありふれた異和だけの患者に対してさえも,生命尊重という至上命令のもとに,診察を行なわねばならないのである.このことのゆえに,病院外来の制度と管理を論ずるにあたっては,一病院の外来が,常に,集まって来る患者群によって,大きく規定されるものであり,種々の問題もこのことから生ずるものであるということを念頭におかねばならないと思う.
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