病院を考える・14
医業の公共性と公的医療機関の使命
前多 豊吉
1
1秋田県立中央病院
pp.77-81
発行日 1969年11月1日
Published Date 1969/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203801
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医師法第1条‘医師は医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し,もって国民の健康な生活を確保するものとする’とあって,医業はおのずからその公共性を定義づけられており,このうち医療については,医師の責務と自覚されているが,保健指導をつかさどる点については,その主体性は確保されているとはいささか言いがたい.近年,日本医師会が地域保健活動を医師会運動の主流と考え,声を大にして指導しているのも,医業の公共性をあらためて再認識したからにほかならない.この保健指導が予防という仮面をかぶって保険医療に混入してきている現状は,逆説的には医療拡大を企図しているという見方も生じ,これらに対するケジメ即医師自身の医療に対する自覚が第1条遵法のたいせつなポイントになる.
もし医師が保険医療の正常な発展を願うのであれば,医療と予防との区別をまず正確に把握しなければいけない.すなわち,公共活動としての保健—予防は治療医学の範囲縮小に連なるべきで,決して拡大の具ではないのである.したがって,もし拡大の具に供するならば,公共性は失われると知るべきである.私は保健指導・公衆衛生活動が行政的基盤のもとに行なわれている現状にも批判をもっているが,仮に現状を容認しても,その活動の第一線に立つべきは医師であって,それが医師会という団体と密着して行なわれるものであり,また現状ではそれが絶対不可欠の条件である.
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