主張
医療の公共性とは
Y
pp.109
発行日 1990年2月1日
Published Date 1990/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900562
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医療の公共性を検討する場合,私どもは医療の社会的態様について考えなければならない.一般的に,医療は,生活水準等社会的条件に左右されるが,社会福祉,社会保障の充実,さらには医療水準の向上は,国民が包括的に享受する権利としてよりも,個々人の満足度として認識されると思われる.医療の変革が叫ばれている現在,過去のわが国医療の変遷を顧みつつ,今後の医療の公共性について考えてみたい.
わが国の医療施策は,明治7年の医制が公布されたことにより開始されたが,医療施策の中心は急性伝染病対策であり,医療の実態としては,警察行政的色彩が強かった.その後,慢性伝染病や精神障害者に対する施策が行われたが,国民一般に対しての施策ではなかった.昭和13年には厚生省が設置されたが,その後の医療は,軍事体制下における富国強兵としての施策が中心であり,公共性のある医療を目的としてはいなかった.
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