特集 職員訓練
職員訓練—5つの課題
院内モラール教育
杉 政孝
1
1立教大学社会学部
pp.35-39
発行日 1963年4月1日
Published Date 1963/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202097
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1.はじめに--モラールとはなにか
この小論の主題であるモラールmoraleという言葉の意味については,近年各方面で重視されている概念であり,本誌においても既に昨年8月号の入間関係特集において厚生省病院管理研究所の吉田所長によってふれられているので,いまさら多言は要さないと思う。しかし,その正確な意味と構造については必ずしも新しい日本語として日常的に統一して用いられているとはいえないし,とくに,ここでいうモラールとは全く別の概念である道徳を意味するモラルmoralという言葉と似ているために,この2つの間に混同があって,モラールを職業道徳か労働倫理の意味に誤解して一定の義務的な目標の達成に奉仕する労働を外部から動機づけ価値評価する心理的なコルセットだと考えている人も皆無とはいえない。もしそのように誤解したままでこの小論を読んでいただくと結果的には筆者の意図と全く違った影響を病院の管理運営に与えることになって心外なので,老婆心ながらごく簡単にモラールという主題の意味を再確認しておきたい。
モラールは元来は軍隊用語で,日本語では士気にあたる。それがさいきん軍隊以外の一般社会でも使われるようになり,産業企業体だけでなく,病院,学校,官公庁,などあらゆる組織体の中でそのメンバーが働く場合の心理的な態度を総称する言葉として重視されるようになった。したがって一般的には,産業士気,勤労意欲などの訳語があてられてよかろう。
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