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Doctors' Taperecord
pp.65
発行日 1955年10月1日
Published Date 1955/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201021
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社会の要請と医師の養成
最近の新聞で,文部省は駅弁大学を職業専門学校という形で再出発させる,という案が報じられた。終戦後の学制改革で,地方々々の伝統もあり特色もあつた各種専門学校が一様に大学になつたために,従来の地方色や特色が失われ,二流,三流の所謂駅弁大学をやたらに造る結果となつてしまつたことは,いろいろな意味で惜しまれてもいるし,又それが近年の大学入学難の大きな原因の一つに数えられてもいる。文部省がこの様な再建策を考えるのも,その案の是非は別として気持はよく分る。医育機関も従来の医専が大学に昇格して,やはり従来の医専が医専なりにもつていた特色が失われ,二流,三流の医大の数をふやした,という感がないでもない。医師の教育水準が向上したのは結構だが,入学資格も卒業後の資格も全く同じということになれば,有名学校や一流学校に集中するのは人情であろう。
学校の特色と云つてもそのフアクターはいろいろある。従来は実際家の養成ということに眼をおいた学校があつて,それはそれで社会にアツピールするものをもつていた。職業教育は大学本来の目的ではないと云つても,医学校の主な目的は医師の養成に他ならない。それならば,できるだけ社会の要請に合う様な医師を大学は養成して社会に供給すべきであろう。我が国の大学は医師の養成方針をたてるに当つてその様な配慮を果しているのであろうか。
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