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Doctors' Taperecord
pp.75-76
発行日 1955年9月1日
Published Date 1955/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201007
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よしのずいから天をのぞく
よしのずいも近代社会では素朴な昔と違つて簡単でない。何か特殊のレンズがはめこまれる場合があるので,笑いごとですまされないことが多い。この様な特殊レンズをある人々は,事象の類型化とか,ジヤーナリズムの魔力などと呼んで警告を発しているが,吾々の周囲にもこの様な現象は決して少くない。既にけりのついたことを今更むし返すにも及ばないけれども,例の医薬分業問題でも同じ様な感じを否定できない。随分長い時間をかけてもみにもんで来たにも拘らず,又この問題は国民生活に非常に密接な問題であつたに拘らず,国民大衆の大部分には結局何のことだか最後まで分らずじまいで片がついたのではあるまいか。元来医薬分業そのものを利害得失の面からフランクに考えると,医師がこの実現を希望して薬剤師(特に町の薬局)が義務として引うける,というのが筋だと思われるが,我が国の現実は正に逆であつた。そして結果は医師も薬局も共に多種多量の薬品を常時準備してそれだけ多くの資本をねかせておかなければならない破目になつてしまつた。これでは喜ぶのは製薬会社ばかりで,結局何のことか分らなくなつてしまつたのである。これにはいろいろわけがあつたのには違いないけれども,問題の焦点は,医師側も薬剤師側も又社会一般も,医薬分業そのものと医薬分業法案をごつちやにして論議した所にあるのではあるまいか。
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