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Doctors' Taperecord
pp.63-64
発行日 1955年3月1日
Published Date 1955/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200938
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インターン
毎年のことながら今年も亦卒業シーズンがやつて来た。何十万という学生が学窓を巣立つて社会へ出て行く。今年はデフレや貿易不振といつた事情で就職戦線はなかなか深刻らしい。卒業を目前に控えて就職運動にかけずり廻つている連中からみると,医学生は別世界の人間の如くみえて羨望に堪えないかも知れない。戦前はインターンも国家試験もなかつたから医学生と雖ども学校から社会へ直結し就職という問題が学生間の話のタネにもなつたものだ。無論当時においても医学生には就職を問題とせず引続き教室に残る者が少くはなく,これらの連中は超然と構えて就職などどこ吹く風であつた。所が今日では大学を出ても少くとも1年たたないと医師として就職ということは不可能となつたのであるから問題になりようがない。同じく問題にしないのでも事情が大いに異る。せち辛い今日の経済事情の下では羨しがられるどころか他学部学生の就職運動を横目でにらんでもう一年親父の脛をかぢる決心を余儀なくされている。思えば医師になる,ということは大変な苦労である。併し今日世界の大勢からみて日本医学が一定の水準を確保していくためにはインターン制度を止める訳にはいかない,というのが識者の一致した意見である様だ。それならばせめてこの1年間のインターンという期間を十分意義あらしめるべく考えねばなるまい。
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