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Doctors' Taperecord
pp.63-64
発行日 1955年7月1日
Published Date 1955/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200981
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焼けない病院は誰が建てるか
千葉県の精神病院の火災は,戸塚の養老院に次いで,最近の痛ましい惨事であつた。原因は目下調査中らしいが,漏電説,放火説いろいろ出ている。併し,原因は何であれ,あの様な大事を惹起した最大の理由は建物が燃え易い木造であつた,ということにつきると思う。さきの養老院の場合といい,今回の病院の場合といい,ジヤーナリズムを始め第三者的立場にある人達は斯様な施設は不燃建築でなければならない,と分り切つたことを述べ立てている。こういうチヤンスを利用して必要性を大いに強調して貰うことは結構であるが,そうするためにはどうしたらできるか,ということが問題にされないので三日坊主でほとぼりがさめると世間は忘れてしまつて再びそのあやまちを繰り返す,ということになるのである。結局問題は医療経済に帰する。医療費の原価のうちに,建物の原価償却分をどうみるか,ということである。今日国民医療費の相当部分を占める社会保険では鉄筋コソクリートの施設経費は算出基礎にみられていない。長い目でみれば不燃建築の方が有利だということが分つていても,資本的条件に恵まれない多くの私的病院にとつては机上の空論といわれても仕方のない現実である。公的病院の場合は所在のコンミュニテイーに属する人達のための社会的施設ということで,別の財源に求めるということも理論的には不可能でない。併し実際は必ずしもそうはいかない様だ。
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