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Dr. Hara's Recordtape
原 素行
pp.55-56
発行日 1954年7月1日
Published Date 1954/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200839
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(14)習慣のこと もう20年も昔のことであるがこんな話を雑誌で読んだことがある。「汽車の食堂で外人が親子丼を食べていた。あまりに不思議なので親子丼がお好きですかと質ねてみましたら特に好きではないと云う。だが日本のコツクさんは毎日飯べているお飯物の方が洋食よりも上手に作れるでしようというのであつた」
私共が学校を卒業し一応紳士らしい姿になろうと背広服を着たのは大正の中期である。その頃洋服を誂えてもなかなか身体によく合つたのが出来なくて着心地が悪くて閉口したものだ。この頃の洋服屋ならばどんな洋服屋でも実用的な洋服を仕立ててくれる。昔は洋服屋では主人公位が洋服であつても職人は和服に角帯それに下駄ばきと云うのであつたが,当節は猫も杓子も職人も皆洋服,自然と洋服が板について来たのだと思う。
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