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Dr. Hara's Recordtape
原 素行
pp.45-46
発行日 1954年4月1日
Published Date 1954/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200803
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(8)母親の育児教育
褥婦が退院のときは,予め育児の方法を病院から教えられる筈である。母親学級という華々しい方法で同時に数人が教授をうけることもあろう。だが,私共は寧ろ個人教授の方がよいと考えている。即ち仁を見て法を説くやり方である。それは病院にもよりけりであろうが,私共の病院では褥婦の教養程度の相違が甚しい為めに起つた必要性からである。入院中に母親に新生児の取扱い方を実際に継続して練習させることは効果的であると思う。授乳をさせたり,体重を測定させたり,沐浴を行わせたり,等々之等の正確なる技術を身につけて帰宅させてみたいと考えたこともあつた。然し,此の考えは実行に到らずに壁にぶつかつてしまつた。この毎日毎日の練習は看護婦の人手不足にプラスになるようで,実は非常にマイナスになると云う。それはよき指導者の人数を揃えねばならないからである。但し小規模の産科病室ならば,やつてやれないことはあるまい。但し母親任かせにすることはいけない。兎も角,実力ある看護婦が必要だ。
このような事情の下では,退院した母親の育児を実際に指導することが出来たら,非常によかろうと思われるが,訪問看謹婦を置けない病院では到底不可能なことであろ。この悩みの最中に,東京都渋谷保健所から提案があつて「うちの保健婦に家庭訪問をさせてやろう」ということになつた。この試みは丁度満2ヵ年2カ月になる。
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