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ノーベル平和賞に輝くシユワイツアとランバレーネ病院
高橋 功
pp.41-44
発行日 1954年4月1日
Published Date 1954/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200802
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アルベルト・シユワイツアは1875年に牧師の子として旧ドイツ領(現在はフランス領)のカイゼルスベルグに生れた。神の福音と伝える牧師の家に育つたシユワイツアは,無言のうちに自然に慈悲博愛の精神を自分の心に培つていた。そしてシユトラスブルグ大学で神学を修め,1897年に神学部を卒業し,聖ニコライ教会の牧師補となり,又シユトラブルグ大学の神学部講師に任ぜられた。大学在学中に哲学に興味をおぼえて,カントを研究し,1899年にはまづ哲学博士の学位を獲,翌1900年には神学博士の称号を得た。又,シユワイツアに幼少のころから教会でパイプオルガンを聞き,いつのまにか自分でもペダルをふんで,キーを叩くようになつた。ミユールハラゼンの高等学校に通学中にオイゲン・ミユンヒに就いて正式に音楽の勉強をはじめ,シユトラスブルグ大学卒業後はパリでシヤール・ヴイドールに師事し,主としてバツハの音楽を研究しました。そして30才の時シユワイツアは500頁にわたる大著「バツハ」を出版して注目されるようになつたし,又パリのバツハ協会の専属オルガニストとしてステージに立つて活躍した。
音楽ではその頃まだ博士の学位を獲なかつたが,バツハ研究家として又オルガン演奏家として立派に一家を成していたのである。即ちシユワイツアは30才までに,学問と芸術をちやんと身につけていたのである。これは普通の人間が3人かかつても望めないほどの学識である。
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