特集 人口高齢化と病院医療
巻頭言
松田 晋哉
1
1産業医科大学 医学部 公衆衛生学教室
pp.17
発行日 2014年1月1日
Published Date 2014/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102689
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
人口高齢化に伴い医療提供体制の再編成が求められている.その背景には高齢化の進行による傷病構造の変化に加えて,本特集で猪飼周平氏が説明しているように社会の成熟化によって「ケア観の変化=生活モデル化」が生じているというより本質的な概念変化がある.このパラダイムの変化は,医療か介護か,施設か在宅かといった二分論的なサービス提供体制ではなく,個々の患者のQOL(quality of life)に焦点を当てた,より包括的なケア体制の実現を求めるものである.
本特集の企画者である筆者が例示したように,今後地域においては従来であれば療養病床で治療を受けていた患者を在宅でみる体制が不可欠となる.生活の場で入院医療的なケアを提供することが求められるのである.それはあたかも地域全体を1つの病棟とみなすような仕組みとなる.病棟において24時間体制で患者をモニタリングしているのは看護師である.従って,地域包括ケアを実現しようとすれば地域のナースステーションが必要となる.林田賢史氏はこうした任にあたる看護師に求められる能力として,臨床力に加えてコーディネート力,コミュニケーション力,QOLに対する深い理解を挙げている.こうした力量を持った看護師を病院でいかに育成するかが課題である.
Copyright © 2014, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.