特集 医療計画はこう変わる
巻頭言
松田 晋哉
1
1産業医科大学医学部公衆衛生学教室
pp.681
発行日 2013年9月1日
Published Date 2013/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102604
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わが国が現在直面している医療問題の1つに,医療資源の適正配置の実現がある.このための制度的枠組みが医療計画であるが,これまでの計画は二次医療圏ごとの病床規制としての役割が強く,医療資源の適正配分のツールとしての機能は不十分であった.その原因の1つとしては,地域の傷病構造に関する情報が不足していたため,現状の医療提供体制とのギャップが不明確であったことが挙げられる.
しかし,急性期病院におけるDPCの一般化とそのデータの公開,そして国内の全レセプトを集積したNational Database(以下NDB)の行政利用が可能になったことなどにより,こうした情報不足の状況が急速に改善しつつある.具体的には,DPC関連情報の公開により,国内約1700の急性期病院における診療実績(傷病別患者数,救急車による入院患者数等)が病院名とともに公開されたことで,二次医療圏別の救急医療の状況とがん医療に関する情報が詳細に分析できるようになった.さらにNDBのデータにDPCのロジックを適用することで,急性期入院,亜急性期入院,長期入院および外来医療における二次医療圏ごとの傷病構造と当該疾患の診療についての自己完結率(当該医療圏に居住する住民が当該医療圏の医療機関で治療を受けている割合)が把握できるようになった.また,本特集で説明されているように患者調査の結果を人口推計と組み合わせて解析することで,将来の傷病構造を推計する手法も開発されている.このような情報基盤が整備されたことでPDCAサイクルに基づいて進捗管理をするという,一般の企業経営では当たり前のことがようやく可能となったのである.
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