特集 看護職の賃金・給与体系はどうあるべきか
巻頭言
池上 直己
1
1慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室
pp.349
発行日 2012年5月1日
Published Date 2012/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102259
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看護職の賃金・給与体系は,病院経営にとって極めて重要である.収益を確保するために,患者当たりの看護職員の人数と看護師割合の施設基準をクリアすることが優先されるが,そのうえで意欲を高め,人件費を抑える,という二律背反する目的を達成する必要がある.さらに人事考課を行う際は,有資格者であるゆえ容易に転職できる点にも留意しなければならない.これらの課題に対応するために,まず現状の解説をそれぞれの専門家にお願いした.
平井久禎氏は,人事制度・賃金カーブ・等級別賃金レンジは様々であるが,業種によって特別な傾向は見出されないこと,また看護職を等級・コース別に管理し,一般の看護師の昇給を停止する必要性を指摘された.角田由佳氏は,官民格差は初任給においては少なく,他でも縮小する傾向にあるが,勤続10年で比較すると歴然と存在することを明らかにされた.次に,より実務的な観点から,浅見浩氏は昇給原資が退職者と新規採用者の人件費の差額である点,および支給額と同時に,安心感と納得感を与えることの重要性を指摘された.また日本看護協会の岡戸順一氏は,看護職における上がらない賃金と時間外手当の未払いの問題を指摘された.
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