特集 何を目指すチーム医療
巻頭言
池上 直己
1
1慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学教室
pp.909
発行日 2011年12月1日
Published Date 2011/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102149
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チーム医療により,医療・生活の質の向上,医療の効率性を高めることによる医療従事者の負担軽減,および医療の標準化・組織化を通じての医療安全の向上が期待されている.総論としては,誰もが賛同する目的であり,チームを適切に編成し,役割分担を規定すれば達成できるはずである.だが,第一の難関は,医療においては,各職種の役割は法律等によって規定されており,他の分野のように社会環境や組織のニーズの変化に対して柔軟に対応できないことにある.
第二の難関は,各職種の役割を変えるには,まず教育・研修の体系を整備し,次に課程修了者に対して,技能が担保されていることを認証する必要がある.ところが,教員の意識を変えることも,研修指導者を育成することも容易でない.教員として登用するに当たって,資質・能力は学内の基準で審査され,一旦,教職につけば教育内容において大きな裁量権がある.したがって,ニーズの変化に対応するインセンティブは必ずしも高くなく,権威の源泉である研究は学問の自由によって守られている.
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