特集 看護師のキャリアアップ
巻頭言
池上 直己
pp.357
発行日 2003年5月1日
Published Date 2003/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102014
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経済不況もあって看護師不足はかつてほど深刻でなくなったが,病院に勤務する看護師の年齢は二極化している.それは若年層にキャリアアップの機会が十分与えられていないことの表れであり,また多くの病院は年功給であるゆえ,中高年が多いということは病院経営を圧迫していることを意味する.この二つの問題を解決するためには,専門看護師や認定看護師の上級看護資格制度を整備して若い看護師に専門家として自己実現する道を開き,また給与体系を職能給に改めることである.
そこで,同制度が発達している米英の状況をみると,米国で広まった背景には,民間保険が中心で効率化の圧力が強く,各職種に対する法的規制が日本と比べて少ない一方で,おのおのの実力が問われている医療環境がある.その結果,養成機関は上級看護資格者に臨床的な実践能力を持たせるように努力し,また上級看護資格者を採用することによる患者満足度への反映や医師と比べての費用対効果などの研究成果が発表されている.一方英国では,効率化という観点からではなく,政府が高齢化社会や看護師不足の対応策として,看護師の自立と業務範囲の拡大に向けて上級看護資格者の育成に力を注ぐようになった.
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