特集 終末期における延命医療のあり方
巻頭言
池上 直己
1
1慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室
pp.733
発行日 2011年10月1日
Published Date 2011/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102104
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「終末期」も「延命医療」も,共に曖昧な用語である.「終末期」は,がんや慢性疾患を持った患者が徐々に衰弱していく過程において,ある時期から認識する場合もあるし,亡くなった後になって,あの頃から「終末期」であったと気づく場合もある.実は,終末期医療における最大の課題は,患者・家族と医療者,および医療者間で,「終末期」にあることの認識を共有し,対応することである.こうした対応は,突然死した場合を除いて,すべての患者に必要である.
一方,「延命医療」は,治癒を目的とした「積極的治療」,あるいは心身の苦痛を緩和する「緩和医療」と対比的に位置づけられる傾向にある.しかし,抗がん剤による「積極的治療」の効果が数か月の延命に留まる場合もあり,逆に「緩和医療」によっても同程度の効果が期待できる.一方,日本では「延命医療」の代表として位置づけられている胃瘻などによる経管栄養が,認知症末期の患者の延命に役立つかどうかは必ずしも検証されてなく,諸外国では尊厳を保つうえでも推奨されていない.
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