特集 長期療養ケアにおける看護の役割
巻頭言
池上 直己
1
1慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室
pp.333
発行日 2010年5月1日
Published Date 2010/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101683
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欧米で近代病院が誕生したのは18世紀の後半であり,医学的な治療によって治すことができる患者を,福祉施設から分離収容することで始まった.つまり,「治す」ことが病院の存在意義であり,「療養」の場である福祉施設から機能的に分かれる形で創設された.また,看護職の教育は,19世紀後半にナイチンゲールが近代看護学を確立した際に,病棟における患者の管理と看護学生の教育を,1人の総婦長が同時に担うことはできないと判断し,教育を実務より分離した.
一方,日本の病院は,元々福祉施設がなかったので,医師が手近で患者を診るための宿泊施設として誕生した.その後も福祉施設の発達は遅れたので,1973年に老人医療が無料化されると,一部の病院は「療養」の施設となった.入院中の療養の世話は,戦前は主に家族が担っていたが,戦後の占領軍による病院の改革により,主役は看護職に次第に移っていった.しかし,特に老人病院においては今から20年前まで,家族の代替として付添婦が広く定着していた.
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