連載 より良い高齢者終末期ケア体制の構築に向けて・4
米国の高齢者終末期ケアの動向③―終末期の意思決定(上)
岡村 世里奈
1
1国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野
pp.298-301
発行日 2010年4月1日
Published Date 2010/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101676
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
高齢者の終末期ケアに関して,米国が抱えている問題の1つが,いかにして本人の意思を尊重した終末期ケアを提供するかである.というのも,米国でも日本と同様,本人・家族の意向を無視した過剰な医療処置が行われたり,本人の意思が確認できない場合に,終末期の医療処置やケアの内容をめぐって医療機関(介護施設)と家族間で争いに発展するケースが相次いでいる.
もっとも,このように述べると,読者の中には,「米国は患者の延命治療を中止する権利が認められているはずではないのか?」「リビングウイル等の制度も充実しているはずではないのか?」等と疑問を持たれる方も少なくないであろう.確かに米国では,1990年代の前半には,数々の著名な裁判を通して患者のいわゆる「死ぬ権利」が認められている.また,連邦法や州法によって,リビングウイル等,終末期患者の意思決定を支援するための法律が数多く制定されている.しかし,それにもかかわらず,上述のような問題が多発しているのである.それは何故だろうか? 筆者は,この問題の背景には,終末期の意思決定をめぐる重要なポイントが隠されているように感じている.
そこで,今回と次回の2回は,米国の終末期の意思決定をめぐる法制度やその運用状況を紹介しながら,その「終末期の意思決定をめぐる重要なポイント」について考えていきたいと思う.
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.