連載 続クロストーク医療裁判・10
B型肝炎訴訟―他原因論と因果関係の判断―集団予防接種B型肝炎感染事件―最高裁平成18年6月16日判決の事例から
小野本 敦
1
,
星野 豊
2
,
廣瀬 昌博
3
1東京地方裁判所
2筑波大学人文社会科学研究科
3島根大学医学部附属病院 病院医学教育センター
pp.915-920
発行日 2008年10月1日
Published Date 2008/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101304
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本連載は65巻3号~66巻2号に掲載した好評連載の続編である.裁判実務・法律・医療分野に携わる三者が,最高裁判決を事例に論点を解説し,多角的な見方を提供する.
第10回目は前回と論点が異なる注射関係の判決をとりあげる.この平成18年判決は,乳幼児期の集団予防接種によりB型肝炎の持続感染者となった者や遺族の損害賠償請求を認めたものである.接種した者の集団予防接種に関する過失が肯定されることには争いがなく,集団予防接種とB型肝炎の罹患との因果関係が問題となっている.第一審の札幌地裁は因果関係を否定したのに対し,控訴審の札幌高裁はこれを肯定し,最高裁が高裁判決の結論を追認したものであるが,因果関係の肯定の理由について,水平感染の可能性が低かったこと等独自の論立てをしている.なお,法律的には,20年の除斥期間(民法724条後段)の適用を認めるか(その起算点をいつと見るか)という問題も論点となっているが,今回は補足的な記述にとどめた.
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