特集 病院管理からみた患者安全
米国に学ぶ医療安全の方向性
相馬 孝博
1
1国立保健医療科学院政策科学部安全科学室
pp.446-452
発行日 2003年6月1日
Published Date 2003/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100621
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はじめに―その底流
1999年の米国医学院(IOM;Institute of Medicine)1)の報告書は,英国詩人ポープの名文句「過つは人の常,許したもうは神の業(To err is human, to forgive, divine)」からとったタイトルと,米国医療事故犠牲者は交通事故死者数を上回るとの衝撃的な推計で,英語圏のみならず世界中の注目を浴びることになった.しかし,この報告書は決して突然出されたものではない.米国の麻酔患者安全財団は1984年から活動を開始しており,医療事故の発生頻度を調査したハーバード研究は1991年に出されている.時代とともに消費者の権利が意識されるようになり,医療界においても,医療サービスの消費者(=患者)の視点から,医療安全が考えられるようになったのである.
米国には,政府組織の周辺に様々な団体があり,多くは非営利団体であるが,より安全で質の高い医療を求めて,連携をとりつつ継続した活動を行っている.本稿では1990年代後半からの米国の主要な団体の動向(図)を概説し,その方向性を探ってみたい.
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