胃癌外科におけるリンパ節郭清の始まりとその展開・15
1940~50年代の展開(1)―展開の方向と米国での実践
高橋 孝
1
Takashi TAKAHASHI
1
1たむら記念病院外科
pp.703-715
発行日 2007年5月20日
Published Date 2007/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101717
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
【展開の方向と樹幹論文】
1898年,第27回ドイツ外科学会における演説から始まるMikuliczのリンパ節郭清体系は,その後30年以上にわたって欧米,そしてわが国における胃癌外科の基本として引き継がれてきました.1930年代に入り,胃癌切除術死率の低下に伴う切除成績の向上への希求の高まりを背景に,Mikuliczの郭清体系を乗り越える気運が洋の東西にみなぎってきたことが本連載のこれまでの要旨です.そして前回ではRouvière,井上の胃リンパ流の再検討を紹介し,その気運が一段と嵩じてきたことを述べました.しかし,このリンパ流の再検討が胃癌郭清術式の展開へとつながりMikuliczの郭清体系を越えるまでには,まだいくつかの課題が検討を待っていました.
1898年のMikulicz演説以来,胃癌には4つの進展様式があることはすでに知られていました.その病理知見・所見の術中での同定が確実性を増し一般化してくると,それぞれの進展様式への対処法にも多くの関心がもたれるようになったからです.4つの進展様式は互いに関連し合っているのですから,1つの進展様式への対応のみを考えることは実際的でなく,4つの進展様式を同時進行的に考慮しながらそのなかで個々の進展への対処を考えることが実践的であります.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.