特集 変革に立ち向かう病院―病床削減と人材難に対処する
「変わる病院」戦略的事例:自治体病院再編 岩手県立釜石病院と釜石市民病院との統合事例
小山田 惠
1
1全国自治体病院協議会
pp.329-331
発行日 2007年4月1日
Published Date 2007/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100527
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釜石市は,岩手県三陸海岸の中央に位置し,太平洋と北上山地に挟まれた人口43,000人の中都市で,かつては新日鉄釜石製鉄所が町の活力を支え,最盛時は人口10万人を超えていたが,新日鉄が引き揚げ,製鉄所の煙が消えてから町は急速にさびれ,人口は年々減っている.この町に規模と機能が似通った4つの病院があり,この中に県立釜石病院と釜石市民病院という2つの自治体病院がある.両病院共に医師不足と経営悪化という共通の課題を抱えてきた.両病院の運営状況は表に示す通りである.
県立釜石病院は病床数272床,釜石市民病院は250床であるが,医師の充足率は共に80%,患者数は年々減り病床利用率も悪い.経営状態も悪く,累積赤字は2003年で県立病院が7億9,700万円,市民病院は28億4,300万円になっていた.医師の派遣元は,県立病院が岩手医科大学,市民病院は東北大学であった.2003年12月,市民病院の院長は市議会においてこの状況を説明し,この窮状から脱却するためには両病院の統合以外にないと訴えた.これを受けて市長,市議会が動き出し,市政課題懇談会等多くの会議を開催して広く意見を聞き,その後県知事との合意のもとに「釜石地域医療提供のあり方検討会」(2004年4~9月),さらに専門部会を作って医療提供体制のあり方について具体的意見の集約を図った.専門部会には,県,市,両大学の代表,両病院長,地域代表者らが入った.私は自治体病院代表という立場もあったが,東北大学出身である一方,県立病院に永年勤務して両病院の事情を熟知しているということでこの会の委員に加わり,また個別的に県,市からの相談に応じてきた.
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