特集 変革に立ち向かう病院―病床削減と人材難に対処する
「変わる病院」戦略的事例:病床転換 メディカルナーシングケアビレッジ住慶構想―従来型施設から,住まいへの転換
阿部 知哉
1
1医療法人社団向仁会
pp.326-328
発行日 2007年4月1日
Published Date 2007/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100526
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
平成18年6月に成立した医療保険制度改革法案によって,平成23年3月31日までに,医療機関の療養病床が約38万床から約15万床に削減されようとしている.それに伴い,新聞紙上で「介護難民問題」が盛んに取り上げられているが,療養病床再編成問題は約10年前からの議論であり,今さら騒ぎ立てる事象ではない.注目すべき点は,日本が世界でも例を見ない急激な速度で高齢社会を迎えたということであり,それに伴って急激に膨張する高齢者の医療費である.
近年,全国の医療機関(一般病院・精神病院)に対して医療の専門化・高度化が国民から要求される一方,入院期間の大幅な短縮に対する要請が強まっている.かつて昭和63年における病院開設規制の発端となった「社会的入院」の言葉が再び頻繁に使われるようになったが,この「社会的入院」が発生した要因として,わが国の「家族構造の変化」が挙げられる.戦後,日本の社会は経済生活と日常生活との区分が明確化され,世帯規模の縮小が急激に進み,その結果,身体的あるいは経済的に一人では自立できない構成員を扶養するという家族の大きな本来機能が喪失された.この「扶養」の受け皿として,平成4年の医療提供体制の見直しによって生まれた「療養型病床群」(以前の老人病院)が担うことになったのである.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.