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医療機関にとって,診療記録は有形で残るアウトカムの大部分を占めるもので,病院管理学の礎を築いた Malcolm T. Mac Eachern がその著『Hospital Organization and Management (病院組織と管理)』の中で,診療録には,
1)患者にとっての価値
2)病院にとっての価値
3)医学研究上の価値
4)医学教育上の価値
5)公衆衛生上の価値
6)法的防衛上の価値
があると述べています.
MacEachern は,アメリカ外科学会での活動を通じて,専門医制度,さらには現在の医療機構認定合同委員会(JCAHO)につながる活動をした人物で,日本にはそれから遅れること80年にして,専門医制度,第三者評価の流れが生まれてきたといえます.
JCAHO の日本版ともいうべき日本医療機能評価機構の Chart Review 検討会が,今年「医療記録の記載指針」を公表しており,その中で,
①医療過程における医療専門職の思考のよりどころ
②患者と医療専門職とのコミュニケーションの基本媒体
③チーム医療の共通媒体
④医療行為の公式証明の基本情報
⑤病院経営の基本情報
⑥学術研究・教育の基本情報
⑦公共社会の健康安全と危機管理の基本情報
の七つの価値が挙げられていますが,時代・場所を隔てても,MacEachern のいう価値から大きくはずれてはいないと思います.
ただ,ここで②患者と医療専門職とのコミュニケーションの基本媒体と③チーム医療の共通媒体という二つの価値は,診療記録のあり方における重要なキーワード,すなわち,『共有』というキーワードでくくれると考えます.
本稿では,1)医療者間の情報共有,2)医療者・患者間の情報共有,3)社会との情報共有という三つの側面でとらえる形で,三回に分け,診療記録の課題を考えていこうと思います.
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