連載 病院管理フォーラム
病院マネジメントの課題
診療記録の課題を考える(3) 社会との情報共有のあり方
西本 寛
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1国立がんセンター予防・検診研究センター情報研究部がんサーベイランス解析室
pp.73-74
発行日 2006年1月1日
Published Date 2006/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100155
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医療施設に蓄積された診療情報は,医療者同士の間で,また,医療者と患者さん本人との間で,共有されることが必要であると,前二回で述べてきました.最終回にあたる今回は,さらにこの情報を社会とどう共有していくか,またその際には何が問題なのかを述べたいと思います.
こうした社会との診療情報の共有の例としては,2005年11月から筆者自身の中心的仕事となった『がん登録』がよい例となると思います.2004年に始まった『第3次対がん10か年総合戦略』の中でがんの罹患率と死亡率の激減がうたわれ,地域がん診療拠点病院の強化などの対策が考えられています.しかし,がん難民の問題を含め,十分ながん診療に関する情報がなく,国民が「がんに罹った時どうしたらよいか」がわからない,がん対策を立てるにしても対策の成果を評価する情報そのものの精度が低い,という状況の中で,国によるがん対策情報センター構想が浮上してきました.このことは今までこうした診療情報の社会的共有がきちんと行われてきていなかったことを反映しています.また,その精度や信頼性について担保する仕組みや指標がなく,情報の標準化が遅れていたことで,社会的に公表されてきた情報の多くも比較に堪えないものであったと推測されます.
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