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医療の分野でも分権化が進んでいる.「骨太の方針2004」(平成16年6月)は地方の裁量度を高め,自主性を大幅に拡大するべく,平成17年度および平成18年度に行う3兆円程度の国庫補助負担金削減を行うとともに同額規模の税源移譲と交付税改革を一体的に着手するものとした.厚生労働省関係では紆余曲折の末,市町村の運営する国民健康保険への国庫負担の削減(5,450億円)と都道府県の財政負担の拡充に至った.
具体的には,国の「財政調整交付金」を減じ,代わって「都道府県財政調整交付金」(4,900億円強)を新たに創設するとともに,保険基盤安定制度において国の負担の廃止と都道府県の負担割合を引き上げている.
「医療費の適正化と保険運営の広域化の第一歩」として都道府県の役割を強化するというわけだが,高齢化に伴い増加する医療費の「つけ」を地方に押し付けるものとする反発も根強い.
わが国では今後,急速に高齢化が進み,2025年には医療に要する社会保障給付費が59兆円と現在の2倍に達すると見込まれるなど医療費の増加と制度の持続可能性への懸念も高まっている.経済財政諮問会議では,国民医療費を名目経済成長率に高齢人口の増加を加味した「マクロ指標」でもって医療費の伸びを抑制する案も出てきている.
こうしたマクロ規制には厚生労働省などを中心に反発も多いが,医療費への何らかの歯止めが求められていることは間違いない.国民皆保険の原則と医療の質を損なうことなく,医療費の膨張を抑え,制度の持続可能性を確保するためには,①医療費の適正化の手法といった「技術論」に留まらず,②適正化への「誘因づけ」とその「担い手」についての「経済分析」が,必要になってくる.本稿では,医療における地方の役割を中心に国と地方,公共と民間の役割分担を含む医療制度の「ガヴァナンス」のあり方について考えていきたい.
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