特集 地方分権の推進について考える
地方分権の基盤と課題
辻山 幸宣
1
1中央大学法学部
pp.616-619
発行日 1998年9月15日
Published Date 1998/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901947
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1998年5月29日.政府はこの日,明治以来のわが国の行政システムを大きく転換する「地方分権推進計画」を閣議決定した.計画は600頁に及ぶ膨大なものであり,改正を要する法令数は480件に達する.これは,各界の第一人者を集めての3年にわたる審議結果を実現に移す計画であり,省庁再編成,金融ビッグバンとともに21世紀の日本の基本設計の一つということができる.だが地方分権の意義は意外に知られていない.その理由の一つは,行政システムの転換という専門的な議論が中心になったことにある.とりわけ,一般の市民には聞き慣れない「機関委任事務」制度の廃止が焦点であったため,市民のみならず行政職員にまでも「難しい」と感じさせた.もう一つの理由は,地方分権の課題が「中央政府と地方政府の関係」の改革に設定されざるを得ないため,地域社会や市民の暮らし向きには関係のないものと受け止められたことにある.
だが,地方分権とは地域づくりのあり方を変えるための制度的条件整備にほかならない.霞が関と永田町で政策を決定し,全国の自治体がそれを実施していく仕組みから,地域のことは地域で決定して実施し,その結果についても地域で責任を負っていくという仕組みへの転換が企図されているのである.本稿では,地方分権によってなにがどう変わるのかを法的・行政的な側面から明らかにし,分権型社会に向けての自治体の課題を考えてみたい.
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