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病院管理研修の沿革
およそプロと呼ばれる人々の多くは,体系的な基礎教育とともに高度専門職業人としての専門教育を受けている.それゆえ,教育研修を軽視する専門分野は,いずれ衰退することになると考えられる.
国立保健医療科学院の実施する病院管理研修は,毎年約800人の参加者があり,これまでに約36,650名が受講した.
国立保健医療科学院は,国立公衆衛生院,国立医療・病院管理研究所および国立感染症研究所・口腔科学部の一部を統合し,保健医療事業や生活衛生に関係する職員および社会福祉事業に関係する職員その他これらに類する者の養成および訓練,ならびにこれらに関する調査および研究を行う新たな機関として,平成14(2002)年4月1日に設置された.これをもって国立公衆衛生院ならびに国立医療・病院管理研究所は組織上では長い歴史を閉じたことになる.
廃止された国立医療・病院管理研究所は,旧厚生省の直轄試験研究機関として,昭和24(1949)年6月,国立東京第一病院(現・国立国際医療センター)内に病院管理研修所として設立され,昭和31(1956)年3月,国立東京第一病院内に病院管理研修所の建物が建設された.昭和36(1961)年研究体制の整備とともに,「病院管理研究所」と改称され,平成2(1990)年7月には組織改正が行われ,それまでの病院管理に関する調査研究に加えて,医療のシステム化を推進するため,医療の普及向上に関する調査研究および医療機関の整備改善に関する調査研究を行うこととし,「国立医療・病院管理研究所」に改称された.
平成4(1992)年8月,国立病院医療センター(現・国立国際医療センター)の隣接地に旧厚生省戸山研究庁舎が完成し,国立予防衛生研究所(現・国立感染症研究所),国立健康・栄養研究所(現・独立行政法人国立健康・栄養研究所)とともに移転し,三つの研究所と国立病院医療センターを総称し,戸山保健医療共同研究センターとしての活動の一翼を担った.
現在の国立保健医療科学院は,東京都練馬区に隣接する埼玉県和光市に所在し,近隣には理化学研究所や税務大学校がある閑静な地にある.また,敷地内にはワンルームマンション型の研修生用宿舎を完備している.東京からのアクセスは,池袋より東武東上線を利用し,和光市駅まで急行なら12分で到着する.都心からは,地下鉄有楽町線が直通運転しており便利である.
病院管理研修は,保健医療に関係する業務に従事している者に対し,医療機関の経営その他の運営および管理に関する基本的かつ専門的な知識,技術等を授けることを目的としており,修業期間が6か月から約1年間の長期研修と,指導者の生涯教育として行われる約1週間の短期研修とに区分される.病院管理研修は,病院管理研修委員会によって全体の企画や運営の調整などが行われている.
長期研修は,将来病院管理や医療の安全管理の指導者の養成を目指しており,6か月間の病院管理専攻科,安全管理研究科および1年間の専門課程病院管理分野の三つのコースが設置されている.なお,この専門課程は,旧病院管理研究科に相当するコースであり,その修了には所定の単位の修得と論文提出が求められ,修了者には MPH (Master of Public Health in Hospital Management) の認定証が授与され,研究課程への入学資格が得られる.
短期研修は,指導者の生涯教育的な意味を持ち,病院長,事務部長,看護部長,薬剤部長などを対象としたコースのほか,財務管理,診療情報管理,施設計画管理,栄養管理などのコースが設置されている.
表1は,主な病院管理研修の概要である.
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