連載 ともに生きる社会のヘルスケア・システム・2
新しいヘルスケア・システム
冨田 信也
1
1株式会社クロス・ロード
pp.414-415
発行日 2005年5月1日
Published Date 2005/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100012
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新しいコミュニティには全人的な保健・医療・福祉の仕組み
地域社会は一定の物理的な空間に人々が集まって生活を営むことを前提としているが,同時に,そこに集まる個々の人々が意識して,自ら選択した共通の価値,ビジョンや理念をもとに集まったとき,それはコミュニティとなる.そして,教育や保健,医療,福祉の領域にそのように共有できる価値やビジョン,理念を目指してともに生活を営みたいと,二人以上の「個」が互いに尊重し合い集まった時に新しいコミュニティは生きはじめる.超高齢社会を目前にして,「わたし」の生き方をそれぞれが考え模索し,行動しつつ人々が集まってくるそのような社会がコミュニティとなってゆく.
個が尊重される新しいコミュニティでは,価値やビジョン,理念の共有のプロセスには継続的な「対話」が働かねばならない.ソクラテスやプラトンの生きたギリシャの時代から今日まで人間が重要な原理として実践してきた「対話」とは,異なる考え方や論理を開かれた公共の場で時にはぶつけ合いあるいは対決させて,それを見守る人々も含めて対話者たちが今までに自ら予期しなかったような新しい認識に至るプロセス(過程)である.私たちの今日の社会は2000年4月に施行した介護保険制度の見直しの論議を進めている.新しいコミュニティを形成してゆく上で消極的な傍観者とはならないで,これらの議論には積極的に実践を通じて参加して,「わたし」たちの考えを具体的に提示してゆきたいものである.
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