特集 四肢まひ
四肢まひ―退院期の周辺
一柳 勝治
1
1関東労災病院
pp.263-267
発行日 1972年8月9日
Published Date 1972/8/9
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518104244
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はじめに
‘四肢まひのリハビリテーションには,悲観的要因が揃い過ぎている’ということは周知の事実である.そして,それらの問題点の多くはここで述べようとしている時期に象徴的に浮き彫りにされることもまた容易に理解されるであろう.
一般的な問題点としては医学的Follow up,家庭の受け入れ時の経済的,社会的態勢,日常生活の介護および介護人,精神的,心理的因子,あるいは職業や学業の問題等々が患者および彼を取り巻く環境の中に存在している.このような問題は四肢まひに特徴的なものではないが四肢まひではこれらの課題が1つでも未解決であればほとんどリハビリテーションが成功しないという点,いい換えればすべての条件が理想的に満たされ,はじめて社会復帰が可能となるというところに特異性を見出し得るかも知れない.
またいわゆる脊損のPTとは経験上決っているゴールへいかに早く到達させるかであるという論もあり,早くそこへ達せしめたPTが優秀だとされる.このfunctional goalは種々のものが,発表されているが,ここでは参考までにバックワルド・ロートンのものを掲げておく(表1).しかしこれはあくまでそこへ達するのを阻害する因子がないことを前提としたもので,臨床的にはspasticityなどの多くの問題があり,必ずしも表1のようにはならない.更に日本の特殊性すなわち,家屋構造や低い経済水準などにより欧米のゴールをそのまま取り入れられない点もある.たとえば,C5,C6の患者に電動車椅子訓練を行なっても家庭に帰って全く実用性がないという場合も多く見受けられる.このような認識のうえで稿を進めることにしよう.
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