書評
養育の原理を貫ぬく「心身障害児の療育」―ベンジャミン・スポック・他著(上田敏・他訳)
福屋 靖子
1
1東大病院リハビリテーション部
pp.175
発行日 1972年6月9日
Published Date 1972/6/9
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518104221
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世に子どもの養育に頭を悩まさない親はいないであろう.本書は心身障害児の療育に関する親のための指導書であるが,本書を読んであらためて認識させられることは,障害児には,その障害ゆえにおこってくる特別の問題があるが,それを解決するためには特別の方法があるのではなくあくまでも通常の子どもの養育法を原理として解決していくべきものだということ,そしてそのためには子どもの養育法の原理を知ることがいかに重要であるかということである.
養育について主に述べられているのは,‘第1部,障害児とともに生きる’の中で,親の態度が子どもに大きな影響を与えるもので,親が子どもの障害をどう考えているかが子どもの自分自身の障害に対する態度決定に大きな影響を与える.したがって,まず親は,‘親自身の問題を理解する’ことから出発しなければならないと強調している.子どもの問題では,障害児に必要な基本的なことはすべての子どもと同じで,親の愛情と正しい理解の上に立って指導し,コントロールし,しつけていくことの重要性を,障害児の身近かにおこる問題の解決策を提示しながら,実に鮮明に述べられている.また,子どもが,自分の障害を受容する.すなわち,現在あるがままの自分を受容するようその導き方が示されている.
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