特集 医療系教育における臨床実習の現状と展望
看護学教育における臨地実習の現状と展望
山口 桂子
1
Keiko Yamaguchi
1
1愛知県立大学看護学部小児看護学
pp.380-386
発行日 2013年5月15日
Published Date 2013/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106274
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はじめに
看護学教育における臨地実習は,「講義や学内演習で得たさまざまな知識や技術,態度を統合する場1)」として位置付けられ,「あらゆる健康レベルにある人々への援助場面を通して看護学の本質と可能性への理解を深め,基礎的な看護実践能力を養うこと」1)を目的とした,看護学教育における中心的で重要な学習の方法である.しかし,昨今の著しい少子高齢社会や,めまぐるしい医学の進歩・医療技術の高度化・複雑化,それに伴う医療費の高騰や入院日数の短縮化といった臨床現場の変貌は,看護学生の臨地実習にもさまざまな影響を及ぼしている.また,そればかりではなく,社会全体の生活様式や価値観の多様化,情報化社会を背景とした利用者の権利意識の向上など,臨地実習という学習方法そのものの存在や目的達成を危うくするようなさまざまな状況もみられるようになっている.
本稿では,このようななかにあっても日々展開されている臨地実習の実際と今後の課題・展望についての私見を述べるなかで,その特性について明らかにしていきたい.なお,実際のカリキュラムにおいては,看護学の専門分野ごとに「臨地実習」科目が設定されているが,今回,総称的な表現で述べることで若干の齟齬が生じる可能性があること,また,今回対象とする実習とは,割合的にも多くを占める,病院等の施設の入院病棟で行われている専門領域別実習を念頭に置きながら述べること,また,筆者が大学に所属していることから,そこでの経験が前提となるであろうことをあらかじめ申し添えておきたい.
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