連載 ニュースウォーク・85
ALS「呼吸器停止事件」に思う
白井 正夫
1
1元朝日新聞
pp.368-369
発行日 2005年4月1日
Published Date 2005/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100135
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4年前,NHK教育テレビの番組「にんげん ゆうゆう」が死について考えるシリーズを取り上げたことがある。オランダの安楽死法制定が世界中の話題になっていたときで,尊厳死運動に関わっていた私も取材を受け,カメラの前に立った。番組には当時,信州大助教授だった若手社会学者の立岩真也氏が出演し,安楽死や尊厳死に対して厳しい生命倫理観を述べていたことを記憶している。
その立岩氏(現在,立命館大大学院教授)の著書で昨秋出版された「ALS不動の身体と息する機械」(医学書院)が,少なからぬ反響を呼んでいる。筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者は,症状が進行すると呼吸筋の麻痺で自発呼吸が困難となり,人工呼吸器なしには生きていけない場面を迎える。氏は,そのとき生か死かの選択を迫るのではなく,「呼吸器をつけて生きる」環境を整えるべき,と主張した。
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