The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 21, Issue 2
(February 1987)
Japanese
English
特集 関節運動学的アプローチ
関節運動学的アプローチ―総論
Outline of Arthrokinematics and Arthrokinematic Approach
千代 和寿
1
,
博田 節夫
2
,
農端 芳之
2
Kazuhisa CHIYO
1
,
Setsuo HAKATA
2
,
Yoshiyuki NOBATA
2
1国立療養所近畿中央病院附属リハビリテーション学院
2国立大阪南病院理学診療科
1Kinki School of Physical Therapy and Occupational Therapy.
2Dept. of Physical Medicine and Rehabilitation, Osaka-minami National Hospital.
pp.76-81
発行日 1987年2月15日
Published Date 1987/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103725
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はじめに
運動療法の技術はここ十数年の間に大きな転換期を迎えている.1960年代の神経生理学的アプローチ(neurophysiological approach以下NPA)の完成とともに,運動療法は一応体系化されたかにみえた.しかし,これらNPAを含む従来の技術には不足や欠陥が多く,充分な臨床的効果があげられておらず1),見直しが必要である.運動機能を治療する場合,①骨,関節機能,②筋機能,③神経機能を個別的に考慮した対応がなされければ効果的な治療は期待出来ない.従来の技術の基礎的研究では,関節可動域運動,筋力増強理論あるいは,NPAに代表されるように,骨運動や神経,筋機能に対するものが中心であり,運動機能の基本的構成要素である関節包内運動機能については特別な配慮はなされていなかった.
関節包内運動障害は,痛みや可動域制限を来たし,さらに二次的に筋力,持久力,協調性などの各機能を障害する原因となる.この関節包内運動の障害は骨,関節疾患のみならず,他の運動障害を来たす疾患においても起こりうる.したがって,運動療法を実施する場合には,この最も基本的な関節包内運動を改善することから出発しなければならない.
関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach以下AKAと略す)は,関節包内運動障害に対する唯一の基本的な評価および,治療技術であり,今後,理学療法における必須の技術になると思われる.本論文では,その基礎理論である関節運動学を含めて,AKAの概略を述べる.
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