プログレス
筋ジストロフィー症の薬物治療の進歩
若山 吉弘
1
1昭和大学藤が丘病院神経内科
pp.49
発行日 1987年1月15日
Published Date 1987/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103716
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筋ジストロフィー症は遺伝性の筋疾患であり病型により臨床症状もかなり異なる.このうち筋緊張性ジストロフィー症(Steinert病)は別として他の筋ジストロフィー症では遺伝様式の違い,発症年齢や性差,筋障害分布の違いなどはあるにせよ,筋萎縮や筋力低下が基本的臨床症状である.また筋生検所見では程度の差こそあれ,筋線維の変性・再生像がみられるのが本症の特徴である.
本症では遺伝子の異常が筋線維異常として表れ,それによる臨床症状として筋萎縮と筋力低下が生ずるが,これらの過程の詳細は従来では不明であったので,治療は対症療法とリハビリテーション療法が主体であった.本症では筋線維壊死と再生のために筋線維構成成分のturn overが正常より速くまたnegative balanceである可能性が強く,歩行可能な時期には比較的蛋白質の多い食事摂取が重要であると考えられる.また薬物療法では末梢血管拡張剤,ビタミン剤,ATP製剤などの投与が有用であると考えられるが,歩行不能となると栄養摂取の過多が肥満につらなるので,この点での注意も必要とされる.
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